就労支援・事業者様へ

利用者ストーリー 古着の出品作業が『自信』になるまで

こんにちは 大阪で古着の卸会社を運営しているALLSCOMPANY株式会社です。

 

本日は、弊社サービスを取り入れている事業者さんのお話を少し紹介したいと思います。

 

こちらの文章は、実際にオルカンの会員さんで、就労支援施設運営者様の声を直接聞いて、オルカンの前田がインタビューした内容となりますので、ご了承ください。

 

【事業者モデル】

  • 和歌山県
  • 就労支援B型
  • 仮)障害支援センターフクフク工房
  • 2023年会員登録

 

私たちが輝ける場所

私たちが輝ける場所」就労継続支援B型事業所が古着販売を通して見つけた、利用者の『自信』という名の宝物について

 

就労継続支援B型事業所

障がいや病気を持つ人々が、それぞれのペースで働く訓練を行い、社会とのつながりを取り戻すための場所で、そこでの活動は、多くの場合、単純な軽作業や生産活動が中心となりがちです。

 

しかし、「仮)障害支援センター フクフク工房」は、一風変わった取り組みで地域から注目を集めています。その方法とは古着のリメイクと販売です。

 

利用者の方に「単なる作業ではなく、彼らが社会と直接つながり、自分の手で価値を生み出す喜びを感じてほしい・・・」そう話してくれたのは 仮)障害支援センター フクフク工房の施設長、山本さん。

 

この古着販売事業を立ち上げたのは、今から2年前のことです。

 

当初は、近隣の自治体や福祉施設から譲り受けた破棄される古着を仕分けし、リサイクル業者に引き渡すだけの単純な作業でした。

 

しかし、利用者の中には、ファッションに強い関心を持つ利用者の若者が多くいました。

 

  • この服、袖を短くしたら可愛いんじゃない?
  • このジーンズ、ダメージ加工したらもっとカッコよくなるのに
  • 最近こういう流行ってるらしいですよ!

 

そんな利用者たちの声に耳を傾けた山本さんは、彼らの「好き」を仕事にできないかと考えました。そして、彼ら(利用者)が主役となる古着リメイク・販売事業がスタートしたのです。

 

そして、そのタイミングで0円古着のオルカンを利用するようになりました。

古着との出会い、そして戸惑い

(仮)渡辺さん(20代男性)は、フクフク工房に来てまだ半年しか経過していない新人さん。

 

対人恐怖症のため、人との会話が苦手で、いつも俯きがちの性格だったとか。

 

古着の山を前にしても、何をどうすればいいのか分からず、ただ黙々と服を畳むことしかできませんでした。

 

古着って、なんか汚いし、臭いし、正直触りたくないんですけど・・・

 

最初はそう思っていた渡辺さんでしたが、ある日、彼が手に取ったのは、どこかで見覚えのあるバンドTシャツでした。

 

それは、彼が学生時代に好きだったバンドのTシャツでした。

 

これ、昔にライブに着て行ったやつやん・・・

 

そのTシャツは、長年の時を経て色褪せし、首元は少しヨレて商品価値としては難しい古着でした。

 

それでも、施設を利用している渡辺さんにとっては、眩しい青春の記憶が詰まった宝物の品だったのです。

 

「このTシャツに どうにかできへんかな・・・ 昔好きやった思い入れのある商品やし・・・」

 

その日から、渡辺さんの古着に対する見方が変わり始めていきました。

 

彼は、そのTシャツを丁寧に洗濯し、アイロンをかけ、細かな毛玉を取り除き、そして、少しだけ色褪せた箇所を、布用ペンで丁寧に補修しました。

 

そのTシャツは、仮)フクフク工房のオンラインストアで販売され、すぐに売れました。

 

購入者からは、「探していたTシャツが見つかって嬉しいです!とても綺麗な状態で、大切に使います」というメッセージが届いたのです。

 

そのメッセージを読んだ渡辺さんの表情が、少しだけ明るくなったのを、職員の山田さんは見逃さなかったといいます。

 

渡辺さん、すごいね!あなたの作業が、誰かを喜ばせたんだよ!

 

山田さんの言葉に、渡辺さんは照れくさそうに笑いました。

 

それは、彼がフクフク工房に来て初めて見せる、心からの笑顔で、すごく印象的でしたと指導員の方がおっしゃっていました。

作業に潜む、緻密な「プロの仕事」

古着の販売は、単に仕入れて売るだけではありません。フクフク工房では、利用者たちがすべての工程に携わっています。

 

まず、仕入れ(寄付)された古着を仕分ける作業から始まります。

 

たくさんの洋服からブランド物やヴィンテージ品を見つけ出す「目利き」の力が試されるので、利用者様だけでなく、さびかんや職員もスキルアップをするために一緒に利用者さんとある程度勉強をしなければなりません。

 

次に、検品とクリーニングでは、シミやほつれ、ボタンの欠損などを丁寧にチェックし、必要に応じて修繕します。

 

この作業は、利用者たちの集中力と細やかな手作業を育み、中には、まるで外科医のように、小さな針と糸で器用にほつれを直す利用者もいます。(就労支援施設ではその人が持つ特徴を把握し、その人に合った仕事を提供することが1番のモチベーションにつながります)

 

そして、古着販売で最も重要なのが、商品の魅力を最大限に引き出すための撮影と、説明文の作成です。

最近ではAIを取り入れた 文章の作成 着画を使う事業者も増えてきています。

こちらの事業所でもAIを使った画像の作成などもやっているようです。

 

もうひとりの主人公(仮)佐藤さん(20代女性)は、幼い頃から絵を描くことが好きで、色彩感覚が非常に豊かで、彼女が就労の業務で担当するのは、古着のスタイリングと撮影です。

 

  • このシャツには、このスカートを合わせたら可愛いかも
  • この角度から撮ったら、生地の質感が伝わるはず
  • この色合いがいいんじゃない?

 

佐藤さんは、プロのモデル顔負けのセンスで、彼女がスタイリングした商品は、いつもすぐに売れていき、古着の魅力を最大限引き出してくれるのです。

 

しかし、佐藤さんには他の施設利用者様と同様に一つの課題がありました。

 

それは、人前で話すことです。

 

撮影に必要な小道具や服を選ぶ際も、職員に「これとこれ、どっちがいいですか?」と尋ねることができず、いつも一人で悩んでいたといいます。

 

ある日、彼女がスタイリングしたワンピースが、何ヶ月もネットショップで売れ残っている姿を見て、理由が分からず落ち込んでいたのだとか・・・

 

 

そこで、指導員の1人が彼女に一つの提案をしました。

 

「このワンピース、すごく可愛いのに、写真だけじゃ良さが伝わりきらないみたい。説明文に、あなたの言葉で『どんな風に着てほしいか』を書いてみない?」

 

佐藤さんはその言葉に戸惑いながらも、本文を作り始めました。

このワンピースは、まるで海辺の風をまとうような、軽やかで優しい一枚です。日差しの強い日も、これを着れば心まで涼しくなります。夏のお出かけにぜひ。

 

彼女の説明した言葉は、まるで一枚の絵画のようで、その説明文が加わった途端、そのワンピースはあっという間に売れていったんだとか。

 

購入者からは、「魅力的な説明文に惹かれて購入しました。着てみたら本当に軽やかで、イメージ通りでした」というメッセージが届きました。

 

それ以来、佐藤さんは、撮影だけでなく、説明文の作成にも積極的に取り組むようになりました。

 

彼女の紡ぎ出す言葉は、フクフク工房の古着に、誰も想像できないような「ストーリー」を与えていったのです。

小さな成功体験が、大きな自信へ

フクフク工房の古着販売事業は、地域とのつながりも生み出しました。

 

月に一度、施設前でフリーマーケットを開催するようになったのですが、フリーマーケットは、健常者でない利用者たちにとって、大きな試練でした。

 

  • いらっしゃいませ!
  • ぜひ試着してみませんか?

 

対人恐怖症の人にとって、見ず知らずの人と話すことは本当に大変なことで、渡辺さんにとって最も怖いことでした。

 

しかし、彼は自分が手入れをしたTシャツを手にお客さんの前のブースに立ちました。

 

程なくすると、彼の前に一人の女性が立ち止まったとのこと。

 

このTシャツ、すごく状態がいいですね。どうしてこんなに安くて綺麗なんですか?

 

その女性の問いに、渡辺さんは初めて、自分の言葉で話し始めました。

 

この商品・・・僕が手入れをしました。毛玉も取って、アイロンもかけたんです・・・

 

「そうなんですね!あなたが手入れしてくれたTシャツ、大切に着ますね!」といって、そのTシャツを購入してくれました。

 

女性の優しい笑顔と、感謝の言葉に渡辺さんの胸は熱くなりました。

 

それは、今まで感じたことのない、満たされた気持ちで、その時に気持ちを相談員さんに話してくれたそうです。

『働く』ということの本当の意味

 

古着は誰かが着て誰かが手放した、いわば「過去」を背負っています。

 

それを、施設の利用者たちが丁寧に手入れし、新たな価値を与え、また誰かの「未来」へとつないでいく。

 

かつては、社会から「役に立たない」「居場所がない」と感じていた彼らが、古着を通して自分の存在価値を見出し、そのことにすこしづつ気づく人が増えているといいます。

 

この服が売れた!僕の仕事は、誰かの役に立った!

 

そのように前向きに捉えて古着を扱う作業を楽しみながらやる利用者さんも増えてきましたし、指導員よりも積極的に古着に興味を示す利用者さんも増えているんだとか。

 

今では、初めて会う人にも笑顔で「いらっしゃいませ」と言えるようになったり、「この説明文、とても素敵ですね」と褒められた佐藤さんは、人前で自分の意見を言えるようになりました。

 

就労支援で古着を販売される人は、単に服としての価値だけでなく、そこに関わる利用者一人ひとりの「想い」と「自信」が詰まっているのです。

 

「この古着は、私たちが心を込めて手入れしました。そして、この仕事を通して、私たちは自分自身に『自信』という名の宝物を見つけているのだと思います。

 

働くことの意味は、お金を稼ぐことだけではなく

 

自分の手で何かを生み出し、誰かを喜ばせ、そして、自分自身が社会の一員として、必要とされていると感じることが、利用者の『働く』ことに対する意識を大きく変えているものだと思います。

 

たかが古着、されど古着ですが、彼らが手に入れた『自信』という名の宝物は、これからの人生を歩んでいく上で、何よりも力強い味方となるでしょうし、たくさんの人に勇気を与えれるものだと思います。

 

最後までご視聴ありがとうございました♪